雑談する面接
普通、面接に臨む場合、応募者はもとより面接官も緊張するものです。
場馴れしたベテラン面接官であれば、そんなことはないよ。緊張などしません、と自信をもって答えられるかたも中にはいらっしゃるかと思います。しかし、面接官も応募者も初めて会う同士です。通常そんな初めて同士が対峙する席では多少なりとも緊張感を伴います。緊張してしまうと頭の中が真っ白になってしまい言いたいことも言えずスムーズに話を進めることはできません。一報が緊張するともう一方も緊張してしまうのが人間の性です。ですから面接の場では応募者も面接官もできるだけ緊張しない雰囲気づくりのルーチンが大切になります。
たとえば、お茶を出して勧める。深呼吸を2~3度行ってもらう。最初に場が和むような言葉をかける。その他いろいろと方法はあるかと思います。そんなルーチンを行ってから面接に入ることは定石ともいえる面接パターンですが、今日は、一風変わった手法である「雑談する面接」について話したいと思います。
■緊張してしまう環境に
通常の面接でのやりとりは、面接官が質問して、そのことに対して応募者が答える。質問内容によっては答えた内容に対しさらに深堀りして訊いていく。これが普通皆さんが行っている面接スタイルではないでしょうか。この場合どうしても採用する側が言葉のやりとりに主導権を握っているので、応募者側に緊張感が生まれてしまいがちです。
また別の見かたですが、通常、面接は会社の会議室などで行うことが多いはず。この場合、面接官は自分の陣地でコト(面接)を行うことになるので普段の空気感で場に臨むことができますが、応募者側は相手の陣地にわけ入ってコト(面接)に臨むことになりますから、こんな関係性においても応募者側に緊張感が生まれやすくなります。緊張が生まれると応募者の素の姿が隠れてしまうので正しく判断するという見地からはあまり歓迎する状態ではなくなってしまいます。
■新卒採用時に効果を発揮
そこでですが、もし雑談しながら面接できたら、いかがでしょう。
雑談ですからお互いが言葉を通じてお互いの情報を交換します。この場合、質問者と回答者が交互に入れ替わるので、立場としてはフィフティフィフティとなります。面接官側も自分の考えや意見を述べることになるので言葉も多くなり会話も弾み出します。もちろん、雑談とはいえお互いの趣味のことを話すのではなく、取り組む仕事やそれに対する考え方等を題材にします。この方法は新卒採用の場合に特に効果的と思えます。キャリア採用であれば、その人の職務経歴でおおよそ判断できること、キャリアがあるので緊張することなく自分のPRができること、このようなことから敢えて雑談面接は必要としないのかもしれません。新卒の場合は、場に不慣れということ、社会人を前にして自分をうまく表現できないこと、話す訓練をあまり行ってきていないこと、このようなことを考慮すると雑談面接が効果を発揮しそうです。
■腹を割った話
具体的には、最初に次のことを話します。緊張しないように進めていきたいこと。そのためにフリートーク(面談)形式で進めていきたいこと。雑談するつもりで話をしてほしいこと。話は最初面接官が主導権を握り質問をしていきます。それに対する答えに応じて、さらに話題を提供します。
たとえば、「営業の仕事をどう思いますか」。「営業の仕事は自社の製品をお客さまに紹介しそれを実際に使ってもらうように仕向けて行くことです」。「そうですね。でも結果的に必ず成し得ないといけないことが営業にありますがそれは何だと思いますか」。「それはやはり成績を上げることだと思います」。「そうです。営業の最終の役割は数字の管理と達成です。そのために何をなすかを考え実行することです。やっていけそうですか」。「はい、私も計画して実行しその結果を分析することは今まで行ってきているので大丈夫かと思っています」。「ストレスが溜まり易い職業ですがストレスを感じた時どうしていますか」。「学生時代にストレスらしきものを感じたことはあまり記憶にないのですが、対処法として睡眠・運動・気分転換かなと思っています」。「それはいいことですね。実は気分転換が一番のくすりと私も思います。気分転換にはどんなことを行っていますか」。「散歩です。学生なので使える資金に限界があるので手軽に安く行える散歩をします。近隣の公園や神社などに行って自然に触れています」。「神社などには樹齢のある樹木などがあってその樹形や樹の種類などを考えたりしていると気分が落ち着いてくるので時々行っています」。「それはたぶん自然のチカラを肌で感じることで心も自然体になるのだと思います」。「〇〇さん(面接官)はストレスを感じられていますか」。「ええ、やはり感じますよ。だれでも感じるものだと思います。僕の場合は趣味に没頭することでストレスを和らげています。趣味は土日にいくゴルフ練習です」
このように面接官側と応募者側で会話をすることで一方的な言葉の交戦を行わず相互のコミュニケーションをとることができます。このような面接を行うと応募者の考えを深く理解できてその人がその職に向いているのか向いていないのか、伸びて行く人かそうではない人か、手がかりを多く得ることができます。
いかがでしょうか。貴社でも一度行ってみてはいかがでしょう。
参考までにですが、これは一次面接時ではなく、二次面接時や三次面接時のように選考が進んだタイミングで、踏み込んだ情報が欲しい時に向いていると思います。この面接のメリットは他にもあります。それは応募者側の会社への理解を深めることができ、会社のファン化に繋がりその結果優秀な応募者の採用にも繋がる可能性があることです。”腹を割った面接”は意外と効果的です。