辞めさせないマネジメントとは
今から5年ほど前、日本の新卒採用マーケットは完全に買い手(企業側有利)市場でした。ところがここ数年で形成は逆転。今では、新卒学生の採用は大いに苦労する時代となっています。
厚生労働省調査によれば、大学卒業後3年以内に31.9%の人がせっかく就職した会社を辞めてしまっていることが報告されています。採用しにくい上にせっかく採用できた社員に辞められては元も子もありません。
そんな時代だからこそ辞めさせないマネジメントが大切になってきます。
■働く人が減ってしまう時代とは
生産年齢人口というものがあります。これは15歳~64歳の仕事に従事してモノを生産できる人たちの数のことです。日本のマーケットでは1990年台後半からこの生産年齢人口が減る時代へと突入してしまいました。言い換えるとマーケット縮小の時代に入ってしまいました。マーケット縮小の時代とは働く人が減り続ける時代です。こんな時代だからこそ人を辞めさせない経営、労働環境が必要となってきています。
いくら採用で頑張っても、せっかく入社してきた若い人が辞めて他社へ行ってしまっては採用担当者としても黙って見過ごすわけにはいきません。会社全体の問題として考える必要があります。いい学生(人財)を採用してしっかり育てて辞めさせない環境づくり。
今日はこのテーマを考えていきたいと思います。
■「やれ」から「やろう」へ
1990年のバブル期まではマーケット拡大の時代でした。マーケット拡大の時代はマーケットが拡がっていくわけですからモノは自然と売れていきました。極端な言い方をすれば間違った方法でも帳尻があった時代だったのです。
会社の命令系統もトップダウン型で、指示命令が先行していた時代です。実務を請け負う側(社員側)も受け身型で特に工夫やアイデアがなくても今までのやり方で売れていました。つまり結果を残せていたのです。
ところがマーケット縮小の時代に入ってくるとそううまくことが運ばなくなってきます。今までの成功事例がまったく役に立たなくなります。こんなはずでは・・・と悩みます。
実はマーケット縮小時代ではやみくもにやれ~行くぞ~と突撃してもマーケットに跳ね返されるだけで成果に結びつきません。この時代は組織力をあげて全員の知恵を集める経営でなくてはうまく乗り越えられないのです。
トップダウン型ではなくボトムアップ型経営が求められます。「やれ」から、「やろう」へ。受け身から積極型へ変化する必要があります。そう。自らの意思で行動して考え知恵を絞る労働環境の構築です。
■人財を引き抜かれる前にすべきこと
一般的な話ですが、上司が部下の仕事ぶりを観察した時、ダメな点がよく見えます。10のいいところがあってもひとつの悪いところが目立ってしまいます。あそこがダメ、ここもダメ。こんな感じでイイところよりも悪いところを指摘。部下を呼んで、あそこがダメここがダメとダメ出しをしてしまいます。そして最後に「わかった?」と念押ししてお説教は終了です。
マーケット拡大の時代では、経済も伸びていたこともあって、成績不良の社員でもそこそこ給料も出ていましたが、マーケット縮小時代では、リストラや降格も日常茶飯事です。人間関係がギクシャクしてきて鬱の人も多く出てきています。鬱になれば会社に出られなくなって最後には会社を退社してしまいます。
新卒で採用した学生も例外ではありません。ここ数年に入社してきた学生はいわゆるゆとり世代。小学校から競争を避けて育てられたひとたちです。会社に入って少しお説教をされるとすぐにへこんでしまいます。
マーケット縮小時代の社員活用術はまずは褒めること。10悪い所を指摘するよりひとつイイところを褒めてから接することです。イイところをほめてコミュニケーションを図ってからそのついでのように悪いところを指摘する。ここはよくできているねぇ。次にここをこうしたらもっとよくなると思うよ。とこんな感じです。
そんなまどろっこしいことできないよ。という声も聞こえてきそうですが、ここは我慢です。生産人口減少で今後ますますひとがいなくなる時代に突入します。働くひとがいなければ会社は運営できません。マーケット縮小時代、これからは中小企業から大企業にひとが流れる時代がやってきます。大企業も優秀な人材獲得に窮する時代なので、中小企業から優秀な人材を引き抜こうとしてきます。
事実、今までは新卒採用しか行ってこなかった大企業が中途採用に触手を伸ばし始めています。大企業に優秀な人財を持っていかれる前に中小企業は今後ひとを辞めさせない職場づくりを行う必要があるのです。