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大学卒業し就職後、3年で会社を辞める人、最大で6割

採用担当者として一生懸命採用活動を行ってやっとの思いで新卒学生を確保できても、その社員が3年で会社を辞めてしまったら元も子もありません。経済産業省の調査結果を見ると、社員5人未満の会社では、実に6割にのぼる人が会社を辞めてしまっている実情が垣間見えます。

■多大な労力がかかる採用活動

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採用担当者にとって採用活動は年間を通して行っていく会社の将来を決める大事な行事(仕事)です。
2017年の採用活動(2018年大学卒業予定者対象)で考えた場合、2016年12月くらいから大手就職ナビサイトへの採用情報告知準備(会社紹介の原稿作成)から始まり、明けた2017年3月から広報活動開始に伴って会社説明会の告知を行ってその後の説明会開催へと進めていきます。
説明会開催と簡単に言えどもその準備作業は多忙を極め、学生へのプレゼンテーション資料作成から実際の説明会での講演まで多くの時間と労力を使うものです。またその後の面接や内定決定に至る仕事も採用担当者にとっては多大な労力がかかる激務となります。従業員30名以下の企業では、この仕事をほぼ経営者(社長)自身やそれに準ずる役員クラスが行うことになるはずです。
そんな多大な労力をかけて学生を採用していくわけですが、前述のように入社3年で約半数の人が辞めてしまっています。これが例年続くと仮定したら・・・。あんなに労力をかけて採用したのに何のための採用活動だったのか、と嘆く経営者の姿が労ぜず目に浮かんでくるようです。

■実に6割の人が3年で辞める!

ここで経済産業省調査のデータを紹介します。
大学を卒業後就職、そして入社3年まで経過した時の離職率です。従業員5人未満に始まって従業員1,000人以上の会社まで6段階での調査結果が発表されています(会社規模=5人未満/5人~29人/30人~99人/100人~499人/500人~999人/1,000人以上の6段階)。
平成25年卒でその年4月に入社の人で見てみると、5人未満の会社では59.0%の人が離職。5人~29人の会社では49.9%、30人~99人で38.6%、100人~499人で31.9%、500人~999人で29.2%、1,000人以上で23.6%という離職結果となっています(いずれも3年経過時の離職率)。
調査は平成15年卒から一覧表のかたちで表されていますが、各年度で多少のばらつきがあるものの概ね前述の結果と大きく違ってはいません。ここではっきり見てとれることは、従業員数が多くなればなるほど(会社規模が大きくなればなるほど)離職率が減っていくという傾向です。

逆に考えると従業員数が少なくなればなるほど辞めていく人は増加するということになります。ですからそんな企業規模に該当する企業の社長や経営陣は離職に要注意ということになります。入社3年というとやっと会社のことや社会のしくみが理解できた頃でこれから徐々に本戦力になり得ていくという会社にとっては楽しみな時期。そんな仕事人として佳境とも言える時期にせっかく入社してくれた人に離職されたのでは会社としては大打撃となります。

■何故辞めてしまうのでしょうか。

会社の規模感が小さければ小さいほど何故人は会社を辞めてしまうのか。ここを解決しなければ苦労して学生を採用してもまた3年後結果は同じになってしまいます。
一般的に考えると大手と比較して中小は所得や福利厚生面で劣ってしまいます。所得や厚生面で劣っているということは将来にわたって収入面で不利になります。そんな将来を見越して人は辞めてしまうのでしょうか。でもちょっと待ってください。所得や厚生面の条件は入社前からわかっていたことなのではないでしょうか…。
退職の理由は実はここにあるのではなく、入社前に抱いていた仕事内容や会社の考え方、方向性にズレが生じ、それが直接の退職原因になっていた、としたら…。

中小企業の場合オーナー経営者が多く、オーナー経営者にはその言動を戒める人は会社内にはいないといっても良いでしょう。実はその鶴の一声で経営の方向性や内容が大きく変化していくという特性があります。いい方向に変化すればいいのですが、半数以上は逆のケースと考えられます。経営者の独断で仕事の内容が変化したとしたら、最初に思い描いていた仕事の内容とはかけ離れてしまうことも多々あることでしょう。またそんなストレスから鬱状態に陥って仕事を続けていくことが困難になることも起こり得ます。中小の良さといえば、会社の進路を見極めそこに仕事人としてダイナミックに関わっていくことができる、会社の歯車としてではなく全体に影響を及ぼしながら仕事を創っていける。こんなダイレクト感が中小企業の良さであり、そんな仕事の延長線上に地位や所得の向上が見込める。こんな仕事環境が中小の魅力でもあります。

働きやすい環境、将来を見越せる経営、大手に負けない所得の実現を目指し、中小企業経営者(経営陣)はその経営や指揮指導に工夫を凝らしたいものです。