コミュニケーションを磨く
コミュニケーションの考え方
面接で応募者の評価ポイントの幹に、コミュニケーション能力、というものが必ずあるはず。そのコミュニケーション。これを行う際の大事な考え方のお話しをしたいと思います。コミュニケーションとひとことで済ませてしまいがちですが、とても奥が深くて幅広い言葉だと思います。言葉でコミュニケーションをはかることもあれば、身振り手振りではかることもあって、時には触れることでコミュニケーションをはかることもあります。そう。飼い犬がしっぽを振りながら近くにやってきて「ヨシヨシよくきたね」とカラダを撫でておこなうボディタッチコミュニケーションもそのひとつですね。仕事を行っていく上でのコミュニケーションが大事なことは皆さんよーくわかっていらっしゃることと思います。このように、奥が深くて、幅広い、コミュニケーション、ですが、今日は単純で易しい(優しい)説明を心がけるという考え方にフォーカスしてみます。
■単純で易しく、親切で優しい説明
鈴木康之「名作コピーの教え」2015年(日本経済新聞社)170ページにこんな記述があります。(以下抜粋です。)
あなたが街で不意に人に道を訊ねられたとしましょう。あなたには、その人がどこから来た人か、どうしてそこへ行くのか、何にも分かっていません。その人がどう思ってあなたに訊ねたのかも分かりません。まずあなたは、「はい、なにか」と、訊かれたことを決して嫌がっていない、親切そうな顔を向けるでしょう。そして「ああ駅でしたら」と行き先のほうを向いて、その人も向くようにと指を指して「あの突き当りを左に曲がって」と言って、わざわざ指を左に振ったりします。それが、分かってもらいたい者の気持ちですね。「50メートルほど先の信号を右折してください」。ください、なんてあんたがお願いしなくてもいいのにね。「こんどは100メートルほど先の」と、こんどは、なんてこれも言わなくてもいいのに、前は50メートルだったためにそう言うんでしょうね、「信号を左に曲がれば駅前に出ます」。これで教えてあげたことになるのですが、訊いた人の眼差しを見ていて、本当に道順が頭に入ったかどうか、あなたには分からない。そこで突き当りのほうを向いたままおさらいします。「左、右、左です」と笑顔を向けます。分かりましたか、の笑顔です。訊いた人は真剣な顔で「左、右、左ですね」と繰り返します。そこであなたは「信号に東町駅入り口って書いてありますよ」と付け加えてあげます。訊いた人が「どうもありがとうございました」と笑顔でお礼のお辞儀をする。あなたも会釈を返す。分かってくれてありがとう、の会釈。これが分かっていない者同士の、心優しくて一生懸命のやりとり、です。分かっていない者同士なのだという前提に立つことがすべてのコミュニケーションの原点ではないかと思います。そこで機能するのが、単純で易しく、親切で優しい説明です。(以上抜粋)
随分と長い引用になってしまいました。著者の鈴木康之さんは著名なコピーライターです。この本はそのコピーの勉強のために書かれた本で、引用箇所も本来は、「単純で易しく、親切で優しい、コピーライティングが必要だ」という説得のために書かれた文章です。ですが、コミュニケーションという範疇で考えると広告コピーはそれを代表するものであるので、今回語りたいコミュニケーションという本質を正確にとらえたものになっているので少し長くなってしまいましたが引用させていただきました。いかがでしょうか。
大変、優しく、親切な説明だと思いませんか。こんな説明をしてくれたら道を訊ねた人は理解できるでしょうし相手に感謝したくもなるでしょう。日々の仕事上でもこれくらい親切な説明ができればいいのですが、実際はできていない人やできていない時がありますね。この引用で最も皆さんに伝えたかったことは、最後の行にある、「分かっていない者同士なのだという前提に立つことが全てのコミュニケーションの原点」ということです。分かっていないからどう伝えようか、分かっていないからどんな方法で伝えようか、分かっていないからどのタイミングで伝えようか、こんな風にまずは考えることからスタートしてそこから伝える手法を模索して行く。このことこそコミュニケーションと皆が理解することができればよくいうコミュニケーションミスは会社から極端に少なくなるはずです。
仕事を頼む時、わかっていないという前提に立つとどんなコミュニケーションがとれるでしょう。わかっていないのだから、まず、どこから説明しようかな、と考えるはず。そして頼もうとする仕事を分析してみます。なぜ必要か。何に使うのか。いつまで必要か。コストはいかほどか。どのように進めていけば効率があがるのか。背景はどうか。考え方はどのようなものか。注意点は何か。このような説明を、仕事を頼もうとする相手に行ってから仕事を依頼する。依頼された相手はより詳細な情報を得ながら進めていきたいのでさらに疑問に思うことを質問する。こんなお互いの意思が交錯したとき、聞き漏らしや聞き違いが起こってくる可能性はかぎりなく低くなります。仕事の範囲が絞られてきて精度があがります。無駄な時間や労力も減るので効率が上がって生産性もあがります。会社経営や運営には、効率性の追及がかかせません。貴方が採用担当として人を採用する際には、明るい人、話しやすい人、訊き方の上手な人、明確な回答を準備できる人、感じのいい人、そしてコミュニケーション能力の高そうな人、こんな見かたで面接に臨んでいると思います。ぜひ、貴社も良質なコミュニケーションがとれる人財を採用し業績向上に勤める環境を準備したいものです。