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エントリーシートって本当に必要?

就職(採用)活動戦線、この5月と6月、最大の山場を迎えています。
一般的なこととして、学生が希望する会社に就職したい場合、その意思表示としてエントリーシート(ES)の提出を必須としている企業が殆どではないかと思います。企業側は、第一ステップとして、ESに書かれてある内容を吟味し一次選考に来てもらう学生とそうではない学生を選別する。こんな使われ方のESですが、学生にとっては、実はこれはけっこうな重荷となっている。このことをちょと考えていきたいと思います。

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今回のテーマは、エントリーシート。エントリーシートの提出を義務付けている企業とそうではない企業。就職(採用)活動を行っている企業では当然この二通りのパターンがあります。大学生への聞き取り調査を行ったところ、約8割前後の企業がエントリーシートの提出を掲げているようです。そもそもエントリーシートの役割って何でしょうか。

住所や氏名、学校名、等の情報を得るといった目的だけであれば、履歴書で充分確認ができます。履歴書の記載項目には、学校で取り組んだこと、趣味、自己紹介、自己PR、志望動機といったことが書き込める欄が設けられていますが、実は履歴書によって書く内容はまちまちです。ある履歴書は、自己紹介となっている欄が他の履歴書では自己PRの欄になっている。志望動機を記入する欄が設けられている履歴書もあれば設けられていない履歴書もある。ざっとこんな感じでしょうか。ですから、エントリーシートのひとつの目的や価値を考えた時、どの学生にも同じ設問に答えてもらうことで、全ての学生に対して公平な見方をすることができる、という利点があります。確かに、公平な比較要素の中で学生を見る(判断する)ことができることはそれなりにメリットがあります。しかし、ES提出が一時面接を通過させる要件のみで提出させる位置づけのものならば、はたしてそれでいいの?という疑問が生じるのです。ESの内容のみで、優秀か、自社に合う学生か、本当にわかるのでしょうか。

ESの提出義務化の影響で、本来の優秀な学生がもし貴社にエントリーしてくれなかったとしたなら・・・。実際、学生の声を聞くと、
「説明会に出てESをもらい記入する。睡眠時間は一日4時間程度。受験勉強よりキツイかも」。
「迷いがありつつESを出さなければならず消化不良で志望動機が書けない」。
「ES提出から面接までの時間が短く企業研究や面接対策が不十分」。
優秀な人財が苦も無く多く集まってくれる人気大企業であれば、ES提出も学生を篩(ふるい)にかけるといった意味合いでいいかと思います。そんな企業は、優秀な学生の中からぜいたくと言っていいほど、欲しい(自社に合う)学生を選択することができるので、仮にES提出の条件が原因で学生を取りこぼしその取りこぼした学生がもし優秀であったとしても、結果的には欲しい学生を多くの選択肢の中から採用することができ、大きく困ることはないと推察されます。

ここで、エントリーシートの内容(例)を少し見てみましょう。たとえば・・・

・学生時代のあなたを構成する要素をその詳細と共にこたえて
・5年後、10年後のビジョンは
・自分を表していると思える写真を貼って
・10年後にあったらいいと思える未来とそれを成すための過程
・自分の〇〇力について
・自分らしさを表現
・競合他社との比較分析
・新製品の販売アップのための企画

どうお感じでしょうか・・・?まるで意地悪で書かせているとも思えてしまうのは筆者だけでしょうか?社会経験のない、アルバイト経験はあっても少なくても社員としての仕事経験のない学生に聞くような内容とはとても思えません。たとえば「競合他社との比較分析」という質問に関して。その企業で働く現役の社員の方はできていますか。分析はできていると仮定して、企業にとって次のステップとして必要な競合他社に打ち勝つ戦略の実践はどうでしょうか。「新製品の販売アップのための企画」。これが学生にわかるのであれば、先輩社会人は要らないとも言えます。また「10年後の自分のビジョン」って何を書けばいいのでしょうか・・・。プライベートの10年後は思い描けても、10年後をその際の仕事とリンクさせては考えられないでしょう。「10年後には素敵な相手と結婚していて子供も二人くらいほしいです」という答えは求めてはいないはずだし、学生も書きたくてもそうは書けないはずです。

こんな社会人でも書くのが大変なことを一社一社の書類選考を通過するためにだけに書かなければならない学生がかわいそうです。しかも一社ではなく、数十社、と書き込む必要がありますから。これだけで、勉強する時間はなくなるし、心身とも疲弊してしまいそうですね。学生の思考力や論理性、表現力、集中力、こんな面を見て採否を判断したいということであれば、今まで例にあげたESの質問内容を学生にぶつけてもいいとは思います。ただしそれは、書類審査のES記入段階ではないと思います。

ESなしで、履歴書で書類選考。あとは面接や適性で自社との相性を選択する。もし、こんな選考過程が提示できたら・・・。学生の貴社に対する本来のエントリーがもっと多く生まれるかもしれませんね。一考する価値がありそうです。